三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

大学時代最終章 

ブログ生活34日目

 

大学時代の思い出を記したブログも今日で最終章となる。

前回、就労支援・自立生活支援の事業所での2週間の実習で、就労支援組のほうの見学やお手伝いに参加した話を書いた。

今日は自立生活支援組のほうでの実習体験の話からしようと思う。

 

自立生活支援組は就労支援組の方と比べると高齢だったり、退院して日が浅かったり、働くよりも生活の自立が目的とされている利用者さんである。

自立生活支援の名前の通り、自立した生活を送れるように生活のノウハウを勉強し、習得してもらうための福祉支援事業である。

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講義よりももっとフランクだが、プリントや冊子を使って10人くらいの利用者さんたちと一緒に生活のノウハウを学んでいく。

私が実習に行ってた時は、掃除の仕方や、食中毒対策や、熱中症予防、映画館の利用の仕方などを勉強した。

1日目は「掃除の仕方」で、私も一緒にプリントをもらい見学という形で参加した。

一言で掃除と言っても多岐にわたる。

その時はポットの洗浄の仕方をピンポイントでやった。

私も「へぇそうなんだ!」と学ぶことが多く、実習生のくせに利用者さんと一緒になって夢中で聞いていた。

一通り講義が終わると、実際に事業所内のポットに錠剤を使って利用者さんに体験してもらった。

錠剤の取り扱いや、洗浄中は誰も使用しないように「洗浄中」のシールを貼るなど一つ一つ丁寧に説明されていた。

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そして2日目。

「今日は何の講義かなー♪」ともはやカルチャー教室に通う生徒の気分で楽しみに構えていた。

すると精神保健福祉士のD先生が

「今日は私よその事業所に行かなきゃいけないから、講義は三日月さんお願いね!」

とまるでちょっとしたお使いを頼むように私に講義を託してきた。

「え?は?私がやるんですか?!」

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あまりに突然のことに半分パニックで慌てふためいてしまった。

それでもD先生は、てめぇ昨日見てたんだからできるだろうと言わんばかりに、にっこり笑って「うん、大丈夫だよ」と言って足早に今日の講義の資料だけを私に渡して、そのまま行ってしまった。

その間3分もたっていなかった。

私はこの3分で生徒から先生になってしまったのだ。

この資料と10名の利用者さんの前で私はこれから教えなくてはならない。

 

こいつだいじょうぶかよ・・・

と言った無言の圧力を背後に感じていた。

私は資料に目を通す暇もないまま、ごくりと生唾を飲みこのやるっきゃない状況に覚悟を決めた。

これまでのブログでも何回か書いてきたが、私はいざとなると度胸が据わるところがある。

ただでさえ不安を感じやすい利用者さんの前で私がうろたえてはいけないと思い、全然大丈夫!さぁ始めますよ!というひきつり笑いで振り返って講義を開始した。

 

全員にプリントを配り、今日の内容が「熱中症対策」だとその時知った。

昨日見ていたように、利用者さんにプリントを音読してもらい、その時々でこういうときはどうしたらよいか、この場合はどうすべきかを話したり、利用者さん同士で発言してもらったりした。

 

少しするとだんだん慣れてきて、プリントに載っていないことでも、クイズ形式で内容を復習してみたり、もっとこうすると分かりやすいかなと工夫して調子に乗り始めていた。

利用者さんも初めはいつもと違う未熟な講師に戸惑っていたが、次第に発言してくれるようになったり、質問をしてくれるようになった。

そんなこんなであっという間に午前中の講義は終わり、お昼頃に救いの神のD先生が戻ってきてくれた。

講義はどうだったか聞かれ、何とかプリントの内容を進めた報告をした。

すると利用者さんが「D先生!三日月さん頑張ってましたよ!」とか「分かりやすい講義でした!」と言ってくれたのである。

 

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もちろん気を遣って頂いた事は明らかである。

しかし母方の家系は教師が多いせいか、全くその適性がない劣等生の私にもその血がスプーン一杯程度くらいは流れていたのだろう。

たった数時間の未熟な先生代理だったが、教える喜びに胸が熱くなったのを覚えている。

 

そうしてあっという間に2週間の実習生活は幕を閉じた。

最終日、「今日でこの事業所ともお別れか」と思うと、前半に行ったZ病院とは比べ物にならないほどの愛着と寂しさを感じていた。

そしてもうすぐその時間が終わろうとしている頃、突然事業所内の電気が消えた。

「え?停電?!」

と思っているとキャンドルと小さなケーキとともに「三日月さんお疲れ様!」とみんなが一斉に叫んだ。

「えーー!」

と嬉しさと、突然のサプライズに驚いていると、みんながテーブルを囲んでジュースやお菓子が用意され、ちょっとしたお別れ会を開いてくれたのである。

 

事業所内はいつも以上に和気あいあいとした雰囲気となり、次第に私への質問コーナーの時間のようになっていった。

「どうして精神保健福祉士になろうと思ったのか?」

「兄弟は?」

「趣味は?」

「結婚の予定は?」

…とだんだんプライベートなことをガンガン聞かれはじめ、「このお別れ会ありがたいし嬉しいけど早く終わってくれ…」と思ったものである。笑

 

 そうして3年生の実習も無事にその過程を終え、最終学年の4年生もすべての単位を修得することができ、私たち精神保健福祉士コースの6人は全員無事卒業した。

卒業後はみんなで草津温泉へ2泊3日の卒業旅行へ行き、6人で過ごす最期の時を過ごした。

現在は連絡もとぎれとぎれになり、みんなそれぞれの違った人生を歩んでいる。

あの濃厚な4年間の日々はいまだに忘れることができない。

ここにまた思い出して書き記せてよかったと思っている。

まだまだ書ききれない思い、失敗談、情けない話もあるが、大学時代シリーズはひとまずここで終わりにしようと思う。

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余談の話はまたいずれ小話として紹介できればいいなと思っています。

ここまで読んでくれてありがとうございました!