三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

過酷だったキャスト時代①ディズニーランド編

 ブログ生活7日目

 

昨日も少し触れたが、私は10年以上前にディズニーのキャストをしていたことがある。

ランドではレストランで、シーではお土産やさんで働いていた。

ディズニーのキャストには永久守秘義務というのがあるため、実態や内容を詳細には話せない。

行き帰りの公共機関で職場の話をするのも厳禁だし、家族や友人に話してもダメ…。

といってもいざ中で働いていたら、素敵なコスチュームを着ている以外はディズニーで働いているという実感はあまりなく、普通の職場と同じなので、逆に何を話しちゃいけないかそこら辺の線引きはあいまいである。

でも何となく、これは言っちゃいけないんだろうなと思うことはあるのでそこは避けておくことにする。

  

始めはランドで働いた。

17,8歳の頃だったように思う。

学生だったので土日限定のキャストで、夏休みなどは週5で働いていた。

知ってる人もいると思うが、カリブの海賊から見える「ブルーバイユーレストラン」だ。

ランドで一番高級なレストランである。

私は入社して自分の配属先が決まったとき、「ブルーバイユー」と言われてもどこかわからなかった。

カリブの海賊から見えるレストラン」と言われて「ああ!あそこか!」と初めて気がついた。

 同期入社の子たちから、「ブルーバイユーのコスチューム超かわいいじゃん!羨ましい!」とか「コスチュームだけで選ぶならホーンデットマンションかブルーバイユーだよ!」と言われたので、(私はどんなコスチュームか知らなかった)私の期待値は上がっていった。

今はコスチュームのデザインが変わっているが、私が働いていたころは水色のサテン生地のロングドレスに、メイドさんのような白いエプロンと、白い髪飾りのようなものをつけていた。

ピーターパンのウェンディの水色のドレスのようなものを想像していただければわかりやすい。

私は昔からショートカットで、赤ちゃんの時でさえフリルのドレスやピンクの服が似合わず、反対に車のTシャツやヨットの絵柄の前掛け(兄のおさがり)のほうがよほど似合っているような女だったので、このかわいらしい水色のメイドさんのコスチュームが似合うかいささか心配した。

そして自分では似合っているんだか似合ってないんだかわからないコスチュームを身につけて配属先に向かった。

 

初めて間近で見るブルーバイユーレストランは本当に素敵なところだった。

ブルーバイユーとは「青い入り江」という意味。

青が好きな私にはたまらないほど魅力的な名前だった。

ここはいつでも夜なので、夜の青い入り江で提灯ランプが灯る中、カリブの海賊の水辺を背にお客さんたちは食事をしている。

「こんな素敵なところで働けるんだー!」とテンションはMAXだった。

けど現実はそうはいかなかった。

私は忘れていたのだ。

ディズニーで一番単価が高いレストランということ……

高いレストランということはそれだけ従業員のお作法、言葉遣い、姿勢に至るまで徹底的に教育されているものだ。

教育内容についてはお話できないが、当時の気持ちだけを鮮明に書くとしたらとにかくきつかった。

どれだけ注意されて、どれだけ怒鳴られて、どれだけ失敗したことか・・・しまいには厨房の中にしかいないコックさんにまで怒鳴られたこともあった。

恥ずかしい話だけど仕事後に社員さんの前で泣いたこともあった。

それでも片道1時間半、往復3時間かけてでも通勤していたのは、ディズニーランドが好きという気持ちと、若かったからできた、この二つだけである。

 

きつかったことは確かだが、嬉しいことや幸せなこともたくさんあった。

たぶん普通の飲食店では味わえないような特別な喜びがあったように思う。

それは何と言ってもお客さんたちとの出会いや会話だ。

慣れない仕事で失敗ばかりしてても、こうしたお客さんたちのやり取りにずいぶん助けられた。

「ああ、自分だけではないんだな」と勇気がもらえた。

別のところに配属されていった同期入社の子たちはというと、うってかわってとても楽しそうだった。

「先輩方が優しい」「うちはそんなにハードじゃないよ~!」と。

配属先が違うだけでこんなにも違うものかと、自分だけが貧乏くじを引いたような気分になっていた。

「うちの先輩が言っていたけど、ブルーバイユーってめちゃくちゃ厳しいらしいね。辞める人多いからいつも募集してるんだって。その先輩もブルーバイユーだけは行きたくないって言ってたよー」

・・・あんた入社の時はあんなにバイユーのコスチューム羨ましいって言ってたやーん!…と私は内心つっこんでいた。

 

でも私はここで働いてよかったと心からそう思う。

17,8歳のころ、ビシバシやられたからこそいろんなこと身について、その後働く先々で役に立ったのことのほうが多かったからだ。

それはバイユーの先輩方や社員さんのおかげだと本当に感謝している。  

今日の話はここまで。明日はシーでの話。今日も読んでくれてありがとうございます!