三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。絵本作家になって作品を作り続けることが目標です。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

少年になった17歳の夏

ブログ生活54日目

 

私はこれまで誰にも打ち明けたことのない夢があります。

それは演劇への憧れ。

今日は私と演劇についての話を少し書こうと思います。

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演劇をやりたいと思ったきっかけは小学校のときにやった朗読だった。

私はよく近所のおばちゃんたちに「レモンちゃんは本当によく通る声ねぇ」とか「ハキハキ大きな声でいいわね」と声がでかいことをよく指摘されていた。

 

これは余談なのだが、大人になって歯医者さんでレントゲンを撮った時に、「オペラか演劇をしている方ですか?」と歯医者さんらしくない質問をされたことがあった。

なんのこっちゃと思いきや、「いやね、鼻腔があまりにも広いので、こういう人は声を出す職業の人に多いんですよ」と言われた。

いや歯を見ておくれよと思ったのだが、自分の声が大きい理由がわかって納得できた瞬間でもあった。

 

ともかく大きい声でハキハキと読むのを先生に褒められたものだから、単純な私は朗読が好きになり、家でも毎日国語の教科書を朗読していた。

 それから高学年になり、クラブ活動ができるようになると私は「演劇部に入りたい」と思うようになった。

しかし私の行っていた小学校に演劇クラブはなく、仕方がないので中学生になったら演劇部に入ろう!と決意した。

 

しかし中学にも演劇部はなく、宙に浮いた私の決意は、友達が入るというテニス部に流れていった。

テニス部も楽しかった。

私たちの代からできた部活だったので先輩がいなくて気楽だったし、仲の良い友達と、手を抜きすぎず、熱心になりすぎない程度の適当さ加減が丁度よかった。

3年間テニスを続けたが、高校こそは演劇部に入ろうと最後のチャンスにかけていた。

 

そしていざ高校に入学してみると、演劇部はもう活動はされていなくて、ほこりのかぶった部室が存在するだけだった。

顧問の先生もいなかったので、小学生の頃から抱いていた密かな夢はこの時消え去るのを感じた。

結局、もうテニスをする気もなかったので、私は友達と一緒に吹奏楽部に入部した。

同じ学年の子がたった6人だけの小さな小さな吹奏楽部だった。

 そのうちに、趣味で楽器を始めた担任の先生や隣のクラスの先生まで吹奏楽部に来るようになり、顧問と副顧問の先生たちを入れて大人4人と私たち生徒6人の部活になっていた。

大人のおじさんが4人もいると部活というより楽器愛好家サークルみたいな雰囲気になっていたが、普段は見れない先生たちの顔が見れて楽しかった。

 

吹奏楽部も楽しかったけど、やはり私はどうしてもお芝居がしてみたかった。

そして3年の夏休み前、もう今しかないと思い、仲の良かった美術の先生に「演劇部を作りたい」と相談しに行った。

 部活の作り方を先生に教えてもらい、自分が部長となって私は演劇部を作った。

同級生に声をかけると15名ほど集まってくれ、顧問には美術の先生がなってくれた。

結局何日か足らずであっさり演劇部が出来上がってしまい、こんなことならさっさと作ればよかった…と後悔したのを覚えている。

そして新しくできた演劇部の第一回目のミーティングで、文化祭でお芝居をしようということになった。

 

ワクワクが止まらなかった。

演劇経験者が一人もいなかったので、夏休み中毎日のように学校に来て発声練習やけいこに励んだ。

何もかもが楽しかった。

発声練習も、台本の読み合わせも、衣装や小道具作りも、証明や音響づくりも、毎日寝るのが惜しいくらいだった。

こんなに夢中で、まるで一瞬に、けれど濃密な夏休みを過ごしたのはこの17歳の夏を除いて他にはない。

 

演目は劇団キャラメルボックスの戯曲「ハックルベリーにさよならを」

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主人公は母親と二人暮らしの男の子ケンジ。

家庭教師に教わったボートにあこがれと夢を抱く少年。

しかしある日父親に女の人(カオルさん)を紹介され、大人になったケンジ(自分)と今の自分の気持ちで葛藤する日々の話を書いた作品。

 

 「父さんはカオルさんと幸せになって、母さんはボクの心配だけして年を取ってく。そんなの不公平だよ。カオルさんなんか、いなくなればいいんだ!」

 

このセリフを舞台の上で叫んだのを今も鮮明に覚えている。

結局私が演劇をしたのはこれが最初で最後となった。

 

何年か前に知り合いから京都にある劇団を紹介されたのだが、「むちゃくちゃ厳しいよ」と聞かされて断ったことがある。

中学校のテニス部も、高校の吹奏楽部も、そして演劇部も、楽しみながら自分たちのペースでやってきた部活ばっかりだったので、今更先輩後輩の関係や、ビシバシスポ根みたいなのはできないなと思ったからだ。

 

でも今でも演劇への憧れはなくならない。

またいつか楽しみながらお芝居ができたらなという密かな夢を持っている。

 

演劇はいい。

お芝居はいい。

何にだってなれるし、自分以外の人生を生きられる。

普段言えないようなセリフも、体験できないようなことも舞台の上ならできる。

いつもは何者にもなれない自分が、何者かになれる。

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「ケンジくんに悲しい思いをさせてまで、お父さんを取り上げたくない。だから、さよならね」ケンジには、何も言えなかった。

それから10年。

ケンジは今でも、あの時の自分自身が許せない。

 10年間押し続けたカオルさんの部屋の電話番号。

何千回も願った祈りが、ついに時の流れをさかのぼった。

「もしもし」
10年前のカオルさんの声が受話器ごしに飛び込んでくる。
ケンジはカオルさんに「ごめんなさい」と言った。
「謝ることないのよ。私は私でちゃんと幸せになってみせるから、大丈夫。だから、許してあげてね。あなた自身を」

そして、ゆっくりと時計が動き始めた。

 

ー台本引用「ハックルベリーにさよならを」作・成井豊