三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

絵画は夢、色彩は幻想の世界だ。

ブログ生活124日目

 

私は現在画家として絵を描いていてるが、別段それらしい経歴やエピソードがあるわけでもない。

たいてい「画家」や「芸術家」と呼ばれる人達は、両親もまたアーティストであったり、小さいころから賞をもらうなどして優れた才能を発揮していたり、当然のごとく芸大卒で海外での経歴もある人が多い気がする。

例えそういう経歴がなくても「絵を描くのが楽しくてやめられない!」「寝るのが惜しいくらいなんです!」「3度の飯より絵です!」といった熱意や心意気をもっていたりする。

しかし私にはそういう「らしい」ものがない。

しいて言えば私の従姉妹2人がデザイナーをしているのだが、私の両親はいたって普通の人達である。

小さい頃だって、広告の裏に絵を描いてばかりいる子供ではあったが、別に学校の図工の成績は5段階評価で3か4。

学校や市のコンクールで賞をもらったとか、何かに選ばれたという経験はないし、クラスに何人かはいる「ちょっと絵が描けるやつ」くらいの立ち位置だった。

学校が終わって宿題をして、夕ご飯を食べて、寝る時間までは大抵は部屋で絵は描いていたが、眠くなれば寝てたし、見たいテレビがあればテレビを見た。

つまり「寝るのが惜しいくらい絵が好き!」「やめられない」というように絵を最優先にするような子でもなかった。

 

デッサンや絵本のスクーリングを受けると、本気の心意気を持った人がクラスに1人はいる。

誰よりも早く来て鉛筆を削り、誰よりも前に座って先生の言葉を一言一句逃すまいとメモをし、誰よりもデッサンがうまく、休憩時間には先生に質問をしたり自身の作品を見せに行ったりする人だ。

実際有名で大きなコンクールの最終選考まで選ばれたといった話もしていて、そんな人を目の前にすると私はすっかり気迫負けしてしまうのである。

まるで自分が本物の絵画作品や、芸術作品の横に並ぶイミテーションや模造品のように感じられ、なんとも薄っぺらい、中身のない、価値のない者に思えてきてしまう。

・・・かといって私にはそんな心意気はない。

そういう人達の真似して誰よりも早く来て鉛筆を削り、一番前の席に座って先生にガンガン質問しても、それは単に猿まねをしているだけで、本当の気持ちからやっていないことを自分で知っている。

 

以上のすべてをひっくるめて考えて、やはり私には画家や芸術家と呼ばれる人達が当然のように持っているであろう「らしい経歴」も、「エピソード」も「食い入るような熱意」もないのだ。

そこんとこを比べて、たまにコンプレックスを感じるのだが、先ほども言ったように結局羨ましがっても私はそうはなれないので、自分は自分のペースで、自分の持てる熱意と絵に対する気持ちでやっていくしかないと開き直っている。

 

けど絵は好き、色は好きなのだ。

経歴も、エピソードも、 食い入るような熱意はなくても、私なりの小さな灯りは消えずにずっと心に存在している。

私は昔から絵を描くきっかけになるのは、頭にステキな考えが浮かんだ時だ。

想像の世界やストーリーが、日常のあらゆる出来事をきっかけに、ガス灯に火が灯るようにポッと浮かぶ。

雲の上に住む人々のこと、女勇者の話、ドラゴンと少年の物語、人々の幸せな気持ちが魔法力になる魔法使いの話。

そしてまずは物語を書く。

故に私は本当は児童文学作家にもなりたいという夢がある。

絵と同じくらい物語を書くのが好きなのだ。

物語を書いていると情景が浮かぶ。

飛翔するペガサス、祈る天使、煌めく魔法の世界。それを絵に描く。

白い画用紙を見ているとその世界が現れてくれるのでそのまま描く。

これが私の絵を描くやり方で、このスタイルは中学生の頃から変わらない。

想像して描く。お話があってその世界を描く。

 だから私にとって絵は夢だ。

色は煌く幻想の世界なのだ。

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食い入るような熱意はなくとも、私の中では私なりの感動や情熱がある。

それは有名な芸術家や画家たちに比べたら消え入るような火ほどの情熱なのかもしれない。

しかしシャガールの原画の青を見たときの息を飲む衝撃、ステンドグラスの祈る天使を見たときの一瞬にして溢れた涙、ルドンの色彩を見たときの震える感動。

日常生活を送っていて、これほどまでに心揺さぶられるものはいつも絵や色だ。

そんな時は「ああ、やっぱり私は絵が好きなんだなぁ」としみじみ感じる。

何度もいうがそんなに情熱的ではないけれど・・・

 

一つの絵をジッと見る。

その絵に隠された物語がどんどん浮かんでくる。

たった一枚の絵で、いくつもの物語を感じられるのは絵だけである。

「こう言っているのかな?」「こういうシーンかな?」「きっとこういうことがあったんだろう」などと想像する。

それも自由に感じていい。

見る人の気持ち次第でいい。

その優しさ、あたたかさが「絵」だと思っている。

 

最後に偉大な画家たちが遺した私の心に響いた名言でブログを締めようと思う。

 

・芸術とは見えているものを再現しようとするのではなく、(見えないものを)見えるようにすることだ。(パウル・クレー/スイスの画家)

・幸せな人とは、質素な場所でも、他人には見えない美しさを見ることのできる人である。どんなものでも美しく、大切なのはそれをいかに受け取るかということだけだ。

(ジャコブ・カミーユピサロ/フランス印象派の画家)

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どうぞよいクリスマスを!

本日も読んでいただきありがとうございました!