三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

例え誰に好かれなくても自分のままに

ブログ生活146日目

 

私が絵を描いて生きていこう、好きなことをして幸せに生きていこうと思ったのはちょうど6年前。

それまではただただ毎朝同じ時間に起きて、仕事に行き、ただただ上司や先輩たちのご機嫌とって、理不尽なルールや上司や先輩の機嫌によって体制が変わるような日常に振り回されていた人生だった。

ストレスから体を壊し、耳鳴りや幻覚のようなものまで見えはじめ、ただ毎月支給されるたかだか十何万かの給料と引き換えに神経も魂もすり減らし、それでもまだ夫や子供や頑張る理由になる相手でもいれば違ったのかもしれないが、独り者の私には自分のためにこのお金だけのために生きるのはとても虚しく、大切な若い時間を無駄にしているようにも思えた。

それでも30歳という年齢は行くにも引き下がるにも覚悟のいる年だということだけは分かっていた。

なのでこれがあと10歳も若ければ「次々!」とさっさとこんな職場はやめて次のことをしていたのだが、この年齢ではたやすくそうすることもできずに限界を超え、とうとう体を壊し辞めざる終えない状況になるまで引き伸ばしてしまった。

 

前職を辞めてから、やりたいことを見つけ、ポツポツと絵を描き始め、絵画を販売しているアートメーターというサイトでいくつか絵が売れ始めた頃、売れる絵の傾向が偏っていることに気が付いた。

しかしそれらの絵は「当たり障りのない」「大衆受け」「みんなが好きそうな」というキーワードを少なからず・・・いや大いに意識して描いたものだった。

「こういう絵が受けるかな?」「こういう絵なら当たり障りないかな?」とどちらかというと商売に視点を向けた絵であった。

けどいつも描いている時に葛藤が起きるのである。

「これは本当に私の描きたいものなのか?」「本当にこれでいいの?」

「でもこういう絵を描いているほうが購入してもらえるし・・・」

 

こんな葛藤に苛まれていた時、前職のストレスからまだ脱却できていなかった私はあるカウンセラーの先生のお世話になっていた。

そしてある時普通の世間話をしていた時のことだった。

「今は何をしているんですか?」

と聞かれたので、ずっと絵を描きたかったこと、それで生きていこうと思っていることを話した。

心のどこかで「そんな甘いもんじゃないよ世の中は」とか「そんなことしては生きられないよ」と言われるんじゃないかと覚悟していたが、先生は笑いも否定もせずに深くうなずいて「いいことだと思いますよ僕は、非常にいい生き方だ」と心から言ってくれた。

ああ、世の中にはこう思ってくれる人もいるんだ、私は間違ってもないし、恥ずかしがることもないのかなとうれしくて自信が持てたような気分になった。

この先生になら分かってくれるかなと思って、私は絵の方向性について悩んでいることを話してみた。

すると先生はこういった。

 

「大衆受けする絵を描くより、レモンさん自身の絵を描いたほうがいい。それを気にいる人が100人中1人だけだったとしても、その方が結果的には売れるようになるんだよ。商売とはそういうものだよ。」と。

 

そういう…ものなのかな…

へぇ…そうなんだ!という気持ちでその時は聞いていた。

でも同時に安堵感というか、ホッとしたというか「良かった」と思った。

そしてこの気持ちこそがすべての自分の答えなのだと思った。

「私は自分の描きたいものを描きたかったんだ」

そして勝手に大衆受けとか、みんなが好きそうなと自分で決めつけて自分を押さえていたのはあくまで自分自身だったということも気が付いた。

誰に言われたわけでもないのに勝手に自分を枠にはめて不自由にしている。

私の悪い癖だ。

 

この先生のアドバイスをきっかけに私は自分の望むものだけ描こうと思った。

心から湧き出るものだけ描こうと思った。

それで去る人がいてもいい。

誰も見に来てくれなくなってもいい。

その代わりそれを買ってくれる人は、見つけてくれた人は本当に私の絵が好きって言ってくれる人なんだ…!と思った。

確かに一時期お気に入り登録者数は減ったり、増えなかったりしていた。

絵の販売数も最初の勢いをなくしてしまった。

それでもまあいいや・・・と思って描いてきた。

その中にあっても1人声をかけてくれる方がいたり、購入してくれたお客様からは涙が出るほどあたたかいメッセージをいただいたりもした。

そうやっていただいた言葉が私のすべての原動力となった。

 

今ではもう葛藤したりはしていない。

心の中から湧き出る絵しか描いていない。

そして「あなたの色が好きです」と言ってくれる人がいる。

「色が忘れられない」と言ってくれる人がいる。

その1人1人のために、もちろん絵だけで生きていくことはできていないけれど、いつかそうなることができたら・・・そんな夢を持ち続けてこれからも描いていこうと思う。

例え贅沢はできなくても好きなことをやって幸せな人生だったと胸を張って言えるように。

お金のためではない、お金では手に入れることのできない感動や人とのつながりや温かさ、優しさに触れる為に。

私はそういう人生を選択し、今、大いに幸せなのである。

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