三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

パジャマ体操の夏休み

ブログ生活152日目

 

小学校の夏休みーーーー

それは1年の中で何よりも嬉しい楽しい期間。

近所の公園のお祭り、花火大会、幼なじみの家族達とで行く海水浴、大阪のおばあちゃん家への旅行、子ども会のイベント、デパートでのお化け屋敷・・・

楽しいこと盛りだくさん、嬉しいこと目白押し!!

 

………しかし世の中そんなに甘くありません。

完璧に何もかも幸せ!………なんてこの世にはないのです。

 デメリット、嫌なことはつきものなのです。

 

そして私にとっての夏休みの苦痛なこと。

 

それはラジオ体操・・・

 

私の育った長崎のラジオ体操は、夏休みが始まったその日から毎朝6時30分に近所の公園で開催されます。

学校行くよりも早い時間に起きて体操をしなければならないこのしきたりに、私はずっと疑問と不満をもっていました。

 

けれども姉も兄も行くし、近所のみんなも来てるし、なんなら近所中の大人達もみんなきてるから行かないなんて選択肢はありません。

 眠たい目をこすって、ラジオ体操のカードをぶら下げて姉や兄と無言で公園に向かうのです。

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朝。

公園に集まってラジオ体操の音が流れるまで、たいていはみんな無言でボーッと待機しています。

短パンにランニングシャツ1枚でくるおっさん、アッパッパー※を着たノーメイクのお母さんがた(※女性の夏の簡易的なワンピース)、ボサボサ頭の子どもたち、低血圧なのかベンチで座って青白い顔をしてる子、蚊に刺された足を無表情でボリボリかいている子。

誰一人として楽しみで来た!というような人は一人もいません。

初日からみんなどんよりしています。

 

なので私はいつも「なんでこんなことするんだろう…誰もやりたくなさそうなのに…」と思っていました。

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♫あ〜た〜らし〜い あ〜さがきた〜…

 

ラジオ体操の音楽が流れ始めると、適当に散らばっていた人達がポツポツ動き出し体操をする準備に入ります。

そして当番の人が前に立ち、みんなと向かい合わせになって体操を始めます。

ラジオ体操第二までやり終えると、カードにはんこを押してもらうため子どもたちだけが列に並びます。

姉や兄とはバラバラに並んでますが、先にはんこを押されても何となく兄弟を待っていて、3人でまた無言で家へと帰るのです。

 

家に帰ってもまだ7時前。

そのまま部屋に行きまた寝ます。

 

私にとってこの行事はただ「二度寝を癖づけるだけのもの」でした。

 

私がラジオ体操に行き始めた小学1年生の頃、姉は6年生。

中学生からはこの行事からはおさらばできるので、中学生になりラジオ体操に行かなくていい姉を羨んで「お姉ちゃんずるかー、うらやましかー」とばかり愚痴っていました。

そんな時いつも母には「お姉ちゃんは6年間行ったんやからね」とピシャリと言われ、ぐうの音も出ず、私のラジオ体操へのぼやきはもうまるで夏の風物詩のようになっていました。

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朝6時に起きて、着替えて、顔を洗って家を出る…

 なんとかもう少し眠れないものか…

なんとかラジオ体操にかける時間を短くできないものか。

 

私は夏休みの宿題そっちのけで、そんな思考に、もともとない脳みそをフル回転させていました。

そこで考えたのが「着替える」「顔を洗う」の2工程をなくすことでした。

 

「着替えと顔を洗うことをやめたらもう少し寝てられるね!」

 

小さな子どもがパジャマで来ていようが、目やにがついていようが、誰も見ていないし、第一みんなも眠いからそんなこと気にしてない!

たまにパジャマできてるおじさんもいるし、けど誰も気に留めてなかったし、うん、そうだそうしよう!

 

次の日から早速私は家を出るギリギリまで寝て、起きた瞬間の着の身着のままで公園に向かいました。

兄は先に起きてきちんと着替えて顔も洗っていましたが、パジャマ姿の私を連れて歩いてても何も言いません。

 

「しめしめ、お兄ちゃんが何も言わないならやっぱり大丈夫だね…イヒヒ…」

 

いざ公園に着き、例によってみんなボーッと待機しています。

誰一人として私のことを気にする人なんていやしません。

 「よし、夏中ずっとこれで行こう!」と決心したその時でした。

 

「レモンちゃん、それパジャマじゃなかと?」

 

「…………」

 

幼なじみの子に声をかけられ私は硬直しました。

しかし私は「ちがうよ!」と言いました。

「こーゆー服なんだよ」

 

私は楽したいくせに見栄っ張りな子どもでした。

あのとき「うん!そうなんだ〜着替えるの面倒で〜」と笑って言えたら良かったのに、あくまでパジャマに見えるけどこういう服というのを貫きました。

 

幼なじみは「ふぅん…」と言っていましたが、心の中では「絶対違うだろ、どう見てもパジャマだろそれ」という顔で去っていきました。

 

けど私はめげずにその夏休み中パジャマラジオ体操を貫きました。

幼なじみの子も最初だけ声をかけたもののそれ以降何も言ってきませんでした。

私一人「よしよし」と満足していました。

 

そして今年のラジオ体操も終わりに近づいて来た日、私はこともあろうかスタンプの全部押された優秀なラジオ体操のカードを公園に落として来てしまいました。

慌てて取りに戻ると、当番の大人達が私のカードを拾ってくれてて、「これ誰が落としたやつね?」などと話していました。

 

そしてカードに書かれた名前を見て、

「ほらあの子よパジャマの子!」

「ああパジャマの子かぁ」と言っているのが聞こえました・・・

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その夏の残りのラジオ体操と、2年生以降私がパジャマをやめたのは言うまでもありません。

 

おしまい