三日月レモンのちょこっとエッセイ

絵や絵本を描いて暮らしています。日々の思い、感じたこと、体験したこと、過去のこと、そんな何気ないことを書き綴っていきます。

大学時代④アルコール依存症フロア担当

ブログ生活29日目

 

昨日3年生の時に行われる病院自習の実習先に、悪名のうわさで有名な「Z病院」が当たってしまった話を書いた。

今日はその続きからである。

 

私達のクラス6名の実習先が発表され、私と同じ「Z病院」に当たった子はもう一人いた。

しかし期間がかぶらずに、私が終わった後にその子はやってくるので心強い仲間の存在も消え失せた。

みんなそれぞれ別々の精神病院や、事業所、施設に配属されていたが、「Z病院じゃなくてよかった」という明らかな同情の視線を感じずにはいられなかった。

 

そしていよいよ実習開始の当日、私はたった一人で知らない病院へ向かい、2週間の実習生活をスタートさせた。

Z病院は精神科、心療内科の専門病院で、通所の患者さんに向けたデイナイトケアの取り組みもされていた。

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各フロアによって、薬物依存、アルコール依存、うつ病、性依存…と分けられていて、私はアルコール依存症デイケアのフロアの担当になった。

少しホッとしたことは、同じ大学の他の課の人と、他の大学の人が2人同じフロアの担当になったことだった。

まるきり一人じゃないということがとても心強かった。

 

みなさん治療を受けて、社会復帰している方もいらっしゃったし、断酒の意味でデイケアを利用されている方や、治療の一環でデイケア通いが義務付けられている方や様々だった。

アルコール依存症であるということ以外、何にも変わらない普通の方たちだ。

私はここで何をやるんだろうと不安に思っていると、指導してくださる担当の先生から「自己覚知してください」とだけ言われた。

自己覚知・・・

つまりは実習を通して自分というものを知れということ。

自分がどう感じるか、どう思ったか、自分とはどういう人間か、どういう性格か、それを知りなさいということだ。

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それからの日々は、1日の終わりに担当医から「今日何をしたか、どう感じたか」聞かれるだけで、それ以外は何の指導もなく放置されていた。

でも裏を返せば指導されるのを待つのではなく、自分でどんどん見つけて動いていきなさいってことにも思えたので、せっかく頑張って働いて稼いだ10万円を無駄にするもんかと私は奮起した。

 

前の面接のブログでも書いたが、私は普段は人並み以上に小心者で、心配性で根性のない人間だが、いざとなると変に度胸が据わってしまうところがある。

この時もそうだった。

10万円を無駄にしたくないという庶民のど根性が出たのかもしれない。

放置プレイも指導しないという噂も、感じ方や捉え方は自分次第であるということをここでは学べた気がする。

2週間で何ができる?

精神保健福祉士の仕事ぶりを観察する?

今しかできないことってなんだろ?

どうすべきか考えたあげく、私はたくさんの患者さんと話すことに重点を置くことにした。

なぜならば実際働いている先生たちは薬の時間と、プログラム中の指導以外は机に向かっているので、患者さんと分け隔てなく話せるのは学生の実習の特権かもしれないと思ったからだった。

 

教室2つ分くらいの広いフロアに50名ほどの患者さんがおり、8班に分けられていた。

私は毎日1班ずつ回り、お昼を一緒に食べたり、休憩時間のおしゃべりを楽しんだりしていた。

みんないろんな話をしてくれたし、いろんなことを教えてくれた。

ミサンガの作り方を教えてくれた方もいたし、描いた絵を見せに来てくれた人もいた。

「ここの先生方は何の話も聞いてくれない」と涙を浮かべながら訴えてきた方もいた。 

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しかしZ病院の精神保健福祉士の先生方が悪いのではない。

私が見る限りとてもよく働かれていた。

しかし患者さんの数が多いのと、毎日の多忙なスケジュール、事務作業に、いろいろな機関との連絡作業に追われているよように見えた。

それでも誰一人として冷静で、患者さんと接する時は誠意が見えたし、一人一人の先生が自分のできる最大のことをやっているように私には思えた。

ただ、それが患者さん側からそう見えなかったり、お互いのタイミングが合わなくて邪険にされたと感じていたりということはあるのかもしれない。

けどどちらも基本的に良心的で、よくしようとしていることだけは確かだった。

 

濃厚な2週間だった。

確かに不安で初めての世界で戸惑うこともあったけど、いろいろな人に出会い、いろんな考えを知り、自分というものがどういう人間かを少しは知ることもできた。

実習を終えて、私の中にはZ病院は当初の噂のような印象はもうなかった。

「指導されて当然」という頭で行ったら確かに指導らしい指導はなかったが、聞いたら教えてくれるし、別に邪険にもされなかった。

性依存の患者さんに少し手を触られたときも、先生の一人が気にして声をかけてきてくれた。

本当にほっといたらそんなこと気にもしていなかっただろう。 

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4年にあがり、今度は私達が3年生に実習での体験を語って聞かせる時、私は「Z病院」の噂を断ち切ってやった。

考え方や感じ方、捉え方一つだし、実習を有意義にするのも無意味にするのも自分次第と身をもって体験したからだ。

 「Z病院は評判が良くないと言われていて、私もびびっていましたが、私は評判ほど悪いとは思いませんでした。確かに積極的な指導はなかったですが、自分で考えて動くことに文句を言われるわけではないですし、参加しようとしてることには協力してくれます。分からないことはすぐに答えてくれたし、私達実習生の動きはちゃんと見ててくれました」と言った。

 

こうしてとりあえず1個目の実習先が終了した。

続いて2個目は、小規模の就労支援と、自立生活支援事業所である。

先に病院を終わらせていた安心感から、たいして緊張もせずに行けた覚えがある。

しかしすごい人たちとのたくさんの出会いがありました。

 

今日はここまでにします。

明日はこの続きから書いていこうと思います!

本日も読んでいただきありがとうございました。